【専門家に聞く!】高速バスの「乗り物酔い対策」決定版!

「私、乗り物はあまり強くないから」。大人になっても乗り物に苦手意識が拭えない方、意外と多いですよね。何を隠そう、私もそのひとり……。船はもちろん、車もバスもダメ……。
だから、もちろん高速バスでの移動はしんどい……。そんな人のためにお届けするのが今回の記事です。
乗り物酔い研究の第一人者であえる坂田英明先生にお話を伺ってきました。
乗車前と乗車中の乗り物酔い対策、しっかり聞いてきました!
 

乗り物酔いを引き起こす3+1の条件とは?

先生助けてください!私意外と乗り物酔いしやすいんです……。
私が乗り物酔いしやすい体質だからでしょうか?
 
「人間はヒポクラテスの時代から、乗り物酔いに悩まされてきたのです。船や鉄道、車。そして最近は宇宙酔いという言葉もあります。昔から乗り物酔いはあるんです。そして、程度こそあれ、“条件”さえ揃ってしまえばどんな人でも酔ってしまうんです」
 
先生が挙げた条件とは以下の3つです。
 
乗り物酔いを引き起こす条件
・不規則な情報や強い刺激が目から入ってくる(眼反射)
・不規則な加速や振動、激しい揺れを体で感じる(脊髄反射)
・睡眠不足などのコンディション不良(自律神経反射)
 
「これらの反射の限界を超えてしまったとき、酔いという状態になります。そして、最後のひとつ。カッコつきですが大脳辺縁系です。“酔ったらどうしよう”という不安にかられて乗車前からあくびが止まらない、とか。この状態は、乗る前から既に酔っていますよね。そう、精神的な不安を感じてしまっているときです」
 
乗り物酔い克服のポイントは、これらの条件の逆をとっていくことにあるようです。
目や体で感じる刺激をおさえ、体調を万全にすればいいんですね……。
でも、私はバスの中で本なんか読んだりしないですし、むしろ何もしないでいるのに酔いがちなんです……。

 

じつは三半規管よりも、「脳」に乗り物酔い克服のポイントが?

 
そこで、乗り物酔いのメカニズムから、乗り物酔い対策を考えます。
乗り物酔いは小脳が引き起こすものだと考えたほうが考えやすい、と坂田先生は話します。
 
「もちろん乗り物酔いは、内耳という部分にある三半規管や耳石器が大いに関わっています。たとえばフィギュアスケートの選手がスピンしていても酔わないのは、三半規管内にあるリンパ液を水平に保ちながら、かつ等速で加速・減速を抑えた回り方をしているから。でも、乗り物酔いにおいて、内耳は脇役的に考えてもいいと私は思います。重要なのは前庭小脳というところ。小脳なんです」
 
「前庭小脳」は体のバランス感覚をコントロールする器官。内耳で受けた刺激を調節して大脳に伝えます。まっすぐ歩いたり、自転車に乗ったり、それは前庭小脳でコントロールしているそう。
 
「目まぐるしく変わる風景、クネクネした道で振り回されて加速・減速を繰り返す、昨日は睡眠不足……という刺激を、小脳が処理しきれなくなった場合混乱してしまう。そうすると、一気に“酔い”という状態にもっていかれてしまうんです。逆に処理できれば大きな問題にはならないわけです」
 
3歳から12歳ぐらいが小脳の発達時期。すごく敏感になっているので、この年頃の子どもたちは乗り物に酔いやすいのだとか。
逆に赤ちゃんは小脳の発達が始まらないのでまったく酔わず、20歳前後からは小脳の老化が始まり刺激への反応が鈍くなります。ですから、大人になってくると酔いにくくなっているのは確かなようです。
先生!私の小脳は敏感すぎるから酔ってしまうのですか?小学生程度なんでしょうか?
 
「乗り物酔いではなくほかの症例のケースも考えられますが、今回はそれは除外しますね。小脳は“慣れ”に大いに関係しています。たとえば宇宙飛行士ですが、地上での酔いの訓練でどれだけハイスコアを出しても、結局宇宙に行けば酔ってしまう。でも、慣れれば克服されることがわかっているんです」
 
バスも宇宙も同様と考えられ、バスに多く乗っている人ほど、小脳がバスの挙動に慣れていきます。小脳が「慣れ」の器官であるという意味では、トレーニングすることもできるそうです。

 

【当日までに!】高速バスで酔わないためのトレーニング

「たとえばミラーボールを見ることは目からの刺激に慣れる練習になります。また、後ろ向き歩きなども普段にはない動きなので有効だと思います。そして自律神経のはたらきそのもの、夜寝て朝起きるというきちんとした生活習慣にしていくことも大切なポイントだと考えられます」
 
さらに具体的なトレーニングとして以下の4つの試技を紹介していただきました。
 
1 頭を振る訓練
50cm先の動かないものを見つめながら、頭を(1)左右30度に振る(2)前後30度に振る(3)左右30度に傾ける運動を各10往復、1日2回繰り返します。
 
2目を動かす訓練
50cm先にある、30cm離れた2つの点を(1)左右(2)上下に、頭を動かさずに交互に見つめます。各10往復1日2回繰り返します。
 
3体勢を変える訓練
(1)仰向けと起き上がった状態(2)寝返りを左右に(3)椅子に座った状態と立った状態、各10往復1日2回繰り返します。
 
4足を動かす運動
(1)足を閉じて立つ、継ぎ足(片方の足のつま先にもう片方の足のかかとをつける)で立つ、という2種類の動作を、目を開いた状態と閉じた状態で各5~10分、1日2回繰り返します。
(2)足踏みを目を開いた状態と閉じた状態で各50~100歩、1日2回繰り返します。
(3)1日1,000~5,000歩、歩きます。
 
考案:奈良県立医大
 
 
ただし、効果はすぐに出ませんし、がんばりすぎるのも禁物。
日課にしながら、気長にやるのがおすすめです!
でもそれじゃあ……急いでいるときは何すればいい!?
 

【当日やること!】高速バスで酔わないためのポイント

では、当日はどんな準備をすれば乗り物酔いを避けられるのでしょうか。
「まずは体調を整えて緊張を取り除くことです。大人であれば、少量のアルコールもありだと思います。ガムを噛むことも有効です。唾液がたくさん出て胃腸の動きも活発になりますから。暗示の効果もあるので、自分がいいと思えることは積極的にやったほうがいいですよね。また、高速バスは一度高速道路にのってしまえば加速も減速もさほど多くないですから、非常に酔いにくい乗り物です。酔うはずない!と自信をもって乗ればいいと思います」
ということで、いくつかポイントをまとめていただきました。
 
【乗車前】
1 睡眠は十分とっておくこと

睡眠不足は自律神経が乱れやすくなります。
 
2 空腹も満腹も避ける

自律神経の乱れにつながるので、乗車前に軽い食事を摂りましょう。

 
3 体を締め付けるような服装は避ける

ベルトやネクタイ、きつめの下着など体を締め付ける服装は酔いを助長します。
 
4 自分は酔わない、と暗示をかける

不安や緊張を取り除くのが目的です。
 

5 酔い止めを乗車30分前に飲む

飲んだことによる精神的な安心感も得られます。
 
【乗車中】
1 車内でゲームや読書をしない
極力、目からの刺激をおさえましょう。
 
2 窓から近くの景色を見ない
次々と変わっている車窓からの風景も目の刺激です。
 
3 頭を動かさずに進行方向を見る
三半規管のリンパ液の動きをおさえます。
 
4ガムを噛む
脳が刺激され、唾液で胃腸の動きが活発になります。
 
乗車前と乗車中、それぞれにポイントがあることがわかりました。
でも……それでも酔ってしまったときはどうすればいいのでしょうか。
 
「夜行バスでなければ目はつぶらないほうがいいと思います。揺れへの準備がまったくできなくなりますから。まず、顎をひいて頭を固定する。そして、バスの中で動かない1点を見つめるのがいいでしょう。迷惑にならない程度に、アロマなど好きな香りを持ち歩き、それで気分転換するのもいいと思います」
 
乗り物酔い対策をしっかりして、緊張と不安を取り除いて、私もバス旅をエンジョイします!
乗り物に弱いとお悩みのみなさんも、ポイントをおさえてバス旅を楽しみましょう!

 
お話を聞いたのは……
坂田英明先生
川越耳科学クリニック院長
1988年、埼玉医科大学卒業。1991年、帝京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科助手。
ドイツ・マグデブルグ大学耳鼻咽喉科研究員、埼玉県立小児医療センター耳鼻咽喉科副部長を経て、2008年より目白大学保健医療学部言語聴覚学科教授。2016年より川越耳科学クリニック院長。一般社団法人あさひ国際医科学研究所代表。NPO法人第8神経を考える会代表。日本小児耳鼻科学会評議員。日本耳科学会代議員。
書籍の監修、テレビ出演など多くのメディアでも活躍中。

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※本記事は、2018年09月10日に公開しました。最新の情報と異なる場合があります。ご了承ください。


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