【専門家に聞く】高速バスの「乗り物酔い対策」薬以外でも予防できる?

【専門家に聞く】高速バスの「乗り物酔い対策」薬以外でも予防できる?

リーズナブルな移動手段として重宝する高速バス。しかし、「高速バスは長時間座りっぱなしで疲れちゃう」「夜行バスで朝起きると、腰や首が痛くて……」なんて方も多いのでは?そもそも、静かに座っているだけなのにどうして疲れたり、身体が痛くなったりするのでしょうか?
高速バスでの疲労と腰や首が痛くなる原因&解決法を、身体のプロフェッショナル、スポーツトレーナーの坂詰真二先生に教えていただきました。

長時間同じ姿勢でいると、どうして疲れるの?

走ったり運動したりすることで身体が疲れるのはわかります。でも、じっと座っていても寝ていても、同じ姿勢だとなぜ身体は疲れるのでしょうか?

 

「疲労には、大きく分けて“動的疲労” “静的疲労” という生理的な疲労、そして“心理的疲労”があります。
“動的疲労”とは身体を動かして発生する疲れ。肉体労働をしたりスポーツをしたりすると疲れますよね。
これが“動的疲労”です。
エネルギーを消耗することで起こるものなので、安静にしていれば和らぐシンプルな疲れです」
確かに激しいスポーツでへとへとに疲れても、よく休めば回復しますね。

 

「一方、動かずにじっとしていて起こるのが“静的疲労”です。会社でも家でも椅子に座りっぱなし、という状況が増えた現代に多い疲れがこの疲労です。
身体は動かしていないのでエネルギーは消耗しませんが、じっとしていることで血流が滞り、その結果、疲労物質が身体から出ていかないという状態になるのです。
静かにしていれば解消される“動的疲労”と違い、体力を使わずじっとしていることで感じる“静的疲労”は、逆に“動的休養(=身体を動かすこと)”をしないと解消できません。安静にしていても疲労感はずっと持続したままです」
静的疲労の場合は、身体を動かして、血流などの循環をよくしてあげないとダメなんですね。

 

「そしてもうひとつ、意外と気がつかないうちに陥っているのが“心理的疲労”です。たとえば、室内のランニングマシーンで1時間走ったときと実際に外で1時間ジョギングをしたときでは、室内のランニングマシーンで走った方が疲労度は高くなります。室内で黙々と足を動かしているよりも、外で風を感じたり風景の変化を楽しんだりしながら、実際に地面を蹴って走っている方が疲れにくいんですね。これは同じ量のエネルギーを消費していても、人は変化や刺激が少ないとより疲労を強く感じるようになっているからです」

 

ということは、バスの長時間乗車で感じる疲労は「静的疲労」と「心理的疲労」になるわけですね。それでは、この疲労を軽減するにはどうしたらいいのでしょうか?

 

身体はフラットな状態の方が楽なワケ

「寝ている時間が長い高速バスに乗車するときは、睡眠時の姿勢も大切です」と坂詰先生は説明します。

 

頭と足の高さを心臓に近づけた方が血液など体液の循環がスムーズに行われ、心臓への負担も軽くなるので、その分疲労回復につながります」

 

また、寝具の上での睡眠時は、寝返りを打つことで血液の循環を促したり、皮膚や筋肉にかかる圧迫ストレスを逃がしたりしているそうです。疲労を取り除くには寝返りも大切なんですね。

 

腰や首の痛みを防ぐには、背骨のS字カーブをキープしよう

じっとしていると、疲れるだけでなく、腰や首も痛くなってきますよね。これも長距離移動がつらい理由のひとつです。安静にしているのにどうして痛くなるんでしょうか?

 

「私たちの背骨は真っ直ぐではありません。首から背中、腰、骨盤にかけて脊柱がS字カーブを描き、これによって身体の各部位にかかる負担を調整しています。寝ている場合も起きている場合も、このS字型を保てている姿勢がストレスのない状態で、このS字型が崩れてしまうと筋肉や関節などに余分な負担がかかり、腰痛や首痛が起こります」

 

首から腰にかけての「S字カーブ」をキープするのが、身体に負担をかけないための最大のポイント。私たちは普段正しい姿勢で立っているときは、自力でこのS字型をキープしているそうです。でも、座って平らなシートに寄りかかったり、リクライニングして身体をたおしたり倒したり しているときは、自力でS字型を保つのは難しいですね。
そこで坂詰先生が、身体へのストレスを軽減する方法を以下のように教えてくれました。

 

・背骨のS字型に合わせ、腰とシートの隙間をタオルなどでなるべく埋める
・旅行用の空気枕などで、首との隙間を埋めて頭をサポートする
可動式の首あてが備わっている場合には、自分に合う高さに調節して活用する

 

首痛対策のために、スマホを見る姿勢にも注意!

また、気をつけたいのが「物を見るときの姿勢」。頭の位置が首の痛みを引き起こす要因になるそうです。

 

「頭は首によって支えられています。人の頭の重さはだいたい体重の7~8%になりますから、たとえば50kgの人なら約4kgの重さが首にかかっていることになります。本来、首に一番ストレスがかからないのは、目線と首が垂直になる状態。頭を上や下に向けた姿勢では、首の筋肉や関節に過剰な負担がかかり、痛みを引き起こす要因になります」

 

たいていの人はバスに乗りこんで、長い移動時間に見るのがスマホや本。それも寝ている時間以外はずっと……。当然頭は下を向きっぱなしで、首に大きな負担がかかって痛くなるわけですね。テーブルを出せるシートであれば、膝の上よりテーブルの上に置いて、すこしでも高い位置で見るようにするといいでしょう。

 

疲れや痛みの予防ネタ、これって本当?

「あれが効く」「これはよくない」なんて、よく耳にする疲労予防法。そのネタは本当に効果があるのか、坂詰先生に聞いてみました。

 

・バスに乗る前には軽く運動しておいた方がいいの?

「数時間乗車して、疲れたときに身体を動かすのは疲労解消に役立ちますが、乗車前に行っても疲労の予防にはなりません」

 

・腰痛予防のために使い捨てカイロを貼って寝るといい?

「冷え性の人には有効かもしれませんが、通常バスの車内は適温が保たれていますので、それほど大きな影響はないと思います。それよりも、カイロを貼りっぱなしにすることで起こる低温やけどのリスクの方が心配なので、寝るときには必ず外してくださいね」

 

・足は組まない方がいい?

「さすがに長時間、同じ足を組んだままはよくないですが、起きて座っている状態で、もし楽になるのであれば構いません。足を組むことで、お尻にかかる圧を逃がすことができるからです。ただし、左右均等に足を組みかえてあげるのを忘れずに」

 

・腰痛予防に骨盤ベルトやサポーターをするべき?

「通常、骨盤ベルトやサポーターなどは大きい力がかかるときに、筋肉や骨のストレスを下げるために着けるものです。“動的疲労”を予防するためには有効ですが、身体を動かさない場合には血行を妨げやすいので、おすすめしません。立ったり座ったりするときには役に立つかもしれませんが、静かにしている時間の方が長い移動時間での使用はしない方がいいでしょう」

 

なるほど、動的疲労と静的疲労とでは予防や解消の方法がまったく違うんですね。
WILLERのバスは、レッグレストやフットレスト、首あてなど、疲労予防に役立つ機能も充実。皆さん、十分に活用して快適な時間を過ごしてくださいね。

 

 

お話を聞いたのは……
坂詰真二先生
スポーツトレーナー
「スポーツ&サイエンス」代表。NACA認定ストレングス&コンディショニング・スペシャリスト。各種アスリートへの指導、スポーツ系専門学校講師を務めながら、雑誌『Tarzan』(マガジンハウス)など、様々なメディアで運動指導、監修を行う。『世界一やせるスクワット』(日本文芸社)ほか、著書・監修本多数。

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この記事のライター

サッチ
総合旅行業務取扱管理者を含む旅のスペシャリストたちによる編集チームで執筆しています。 高速バス・夜行バスのご利用に関連した情報を盛りだくさんでお届けします。高速バスのことを知ってもらうための基本情報をはじめとして、全国各地... もっと見る


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